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元々鉄道ブログですが、福岡県古賀市、新宮町、福津市の情報に移行、その後福岡市近郊の情報に寄り道した後、心理学と障害者福祉に関心を移しています。
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 元々は鉄道ブログです。
 と言いつつ、福岡市北郊にある新宮、古賀、福津の情報をメインに書いていました。
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優しさの構造~N・アイゼンバーグ「思いやりのある子どもたち」を読んだ
 僕が中学生の頃、国鉄がなくなってJRになりました。
 国鉄時代の運転士さんが余剰人員の汚名を受け、うどんを茹でている。
 そんな「悲劇」的な記事を、当時は多少の違和感交えて読んでいました。
 職業に貴賤はないだろう。
 そう思っていました。

 去年から、「言葉のある」知的障害者の方と働くようになりました。
 それまでは、「重度」の障害者の方と生活する仕事だったので、新しい発見が多いです。

 キツさはそれ以上ですが。


 今なら、元運転士のうどん屋さんの「悲劇」が理解できます。
 年を取ってから、まったく新しい環境に移るのは、「悲劇」です。

<思いやりのある子どもたち>

 アメリカ合衆国の発達心理学者、ナンシー・アイゼンバーグ(Nancy Eisenberg,1950.3.12-)の書いた、思いやりのある子どもたち―向社会の発達心理という本を読みました。
 この本は、1992年にアメリカで出版された物の日本語訳で、1995年に出たものです。
 恐らく僕が買ったのは、1997年頃。15年位積ん読していてかなり熟成されてました(^_^;)

 この本は、心理学者が心理学を踏まえて書いた本です。

 ですが、一般向けに書かれています。具体的な例が挙げられていますし、用語や人名の解説も各章ごとに付けられています。
 僕のように(応用分野に職を得てはいますが)心理学から20年近く離れてしまっている人間でも、何とか読み通すことができました。
 引用文献が27ページに渡って紹介されていますので、ものたりないと思った方はさらに発展させることも可能です。

 ただ、学者らしく慎重な書き方です。
 ズバッと断言されるのが好きな人にはものたりないかもしれません。
 自分の子どもを思いやりがあるように育てるにはどうしたらいいかとか、具体的な事はほとんど分かりません。

 そういったハウツーものの学問的な裏付けが希薄であるってのだけは、この本を読めばおぼろげながら分かります(^_^;)


<自閉症者の援助行動>

 自閉症者は、 ピアジェ(Jean Piajet)がいう「自己中心性」(参照)とよく似た傾向を言われています。
 他者の考えや感情などを理解する「視点取得」の獲得とも混同され、今一つ僕には使い分けがあるのか分からない「自己中心性」。
 実際、「他者視点」が獲得されていないと思われる言動が観察されていました。

 相手の視点に立って相手の心の動きを想像する能力を「心の理論(ToM:Theory of Mind・参照)」と呼び、イギリスの心理学者バロン=コーエン(Simon Baron-Cohen, 1958.7.23-・参照)は、この未発達が自閉症スペクトラムの根本であるとしているそうです。

 ところが、とても僕が困った時に、何度か自閉症者に助けてもらったことがあります。
 これまでの生活で、「他者視点」の獲得は、向社会行動を促す場合もあるが前提条件ではないのだろうなと考えていました。

<優しさの構造>

 そんな中、僕の職場は、知的障害者の方の働く場になりました。
 そこで利用者さんを観察しているうちに、向社会的行動を多く行う利用者さんには、二通りのタイプがあるような気がしてきました。

 一方は、人柄というか、感情的な向社会性。
 もう一方は、思考力というか想像力と知識を使っていると思われる(仮に呼ぶとすれば)論理的な向社会性。

 そんなことを考えながら読んでいると、こんな記述がありました。

子どもたちのパーソナリティと生い立ちのいくつかの側面は向社会的行動との関連で検討されてきました。最初の側面は、子どもの性、家庭における出生順位(たとえば、子どもが長子か末子か)、家庭の社会経済的地位といった人口統計的変数から構成されます。第二の側面は、子どもの社会的スタイル(たとえば、社交性)と社会的状況の中での対処能力に関係したものです。第三の側面は、他者に対する情緒的反応性、すなわち子どもの同情および共感的反応性と関係しています。四番目の特徴は、知能指数(IQ)や他者の視点取得能力といった認知的発達を示す個人の能力です。

 僕が感じたのは、この第三の側面と第四の側面なのでしょうね。

<早い段階から見られる違い>

 こうした、「感情的に優しい」子どもと、そうでない「論理的に優しい子ども」の違いは、かなり早い段階から観察されるそうです。

 他者の苦痛に対する反応の質に見られる個性の型は、かなり早い時期からはっきりとしてきます。子どもの反応を時間をかけて記録すると、感情優位の向社会的行動に優れる子どもたちがいます。彼らの向社会的な反応には感情的な喚起の要素が多く含まれています。それらの反応は、けっして慎重な認知的処理、内省、あるいは問題解決を示唆するようには記録されることはありません。それとは対照的に、同じ程度に複雑で効果的な向社会的な介入を行う子どもたちのなかには、明らかに強い感情的な喚起を伴わない向社会的行動を見せる子どもたちがいます。彼らは、苦痛を調べたり、探索したり、質問をしたりすることを通して、苦痛を”認知的に”扱うようです。また、向社会的な関わりのなかに攻撃的な要素を有する子どもたちもいます(赤ちゃんを泣かした人をたたく、夫婦げんかの最中に一方の親をたたく、母親を泣かせた新聞を破る)。また、苦痛のサインをさえぎり、それから目をそむけ、逃げ出す子どもたちもいます。
(M.Radke-Yarrow and C.Zahn-Waxler,1984)

 なるほど、「論理的」と言うよりは「認知的」と言う方がしっくりきます。
 攻撃や無化という反応も、そんな頃からあるんですね。

<似たような事は他の本にも>

 先日、読売新聞の書評欄に、ポール・ブルームという人のジャスト・ベイビーという本の書評が出ていました。
 書評によると、「人間の道徳性が、生得的な共感性と善悪の区別に加え、公平性についての論理的考察および文化的慣習の蓄積が絡み合って形成されたものだと説く。」内容だそうです。
 これも、読んでみたいなあ。

 最近、どうして発達心理学者は知的障害者を研究しないのだろうと思うことがあります。
 この優しさの問題もそうですが、数概念の問題等、壁にぶち当たって発達心理学の本を読むことが何度かありました。
 今回のように参考になることもあれば、まったく参考にならないことが多々あります。
 障害児心理学という分野もありますが、障害者心理学ってのはあまり聞きません。
 でも、発達心理学的な気づきは多いんですけどねえ。


【2017年8月31日追記】

 岡田尊司 アスペルガー症候群を読み返して、少し加筆しています。
 この本では、「心の理論」を用いて相手の意図や気持ちを頭で分かる「認知的共感」と、相手と感情を共有して心で感じる「情動的共感」に分けて説明しています。

思いやりのある子どもたち―向社会的行動の発達心理思いやりのある子どもたち―向社会的行動の発達心理
(1995/04)
ナンシー アイゼンバーグ

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