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元々鉄道ブログですが、福岡県古賀市、新宮町、福津市の情報に移行、その後福岡市近郊の情報に寄り道した後、心理学と障害者福祉に関心を移しています。
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 元々は鉄道ブログです。
 と言いつつ、福岡市北郊にある新宮、古賀、福津の情報をメインに書いていました。
 筆者転居のため、最近は福岡市内の情報をメインに書いています。
 自分の興味が向いたものを、自分勝手に調査しています。
 今のところ、基本的に毎週日曜日に更新しています。
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清武英利 しんがり を読んだ
 僕がまだ若かった頃、山一證券という会社が潰れました。
 その山一證券自主廃業の際に最後まで精算等を担った人々を描いたのが、清武英利さんのしんがり 山一證券最後の12人という本。

<号泣の裏>
 
 山一證券最後の社長の「社員は悪くありませんから!」という号泣。
 あの時代を映像で振り返る際によく流れます。
 あの号泣が、労働組合の要請もあっての発言であった。
 僕らにとって意外なそういうエピソードでこの本は始まります。

負け戦のときに、最後列で敵を迎え撃つ者たちを「しんがり」と言います。戦場に最後まで残って味方の退却を助けるのです。
四大証券の一角を占める山一證券が自主廃業を発表したのは、1997年11月のことでした。店頭には「カネを、株券を返せ」と顧客が殺到し、社員たちは雪崩を打って再就職へと走り始めます。
その中で、会社に踏み留まって経営破綻の原因を追究し、清算業務に就いた一群の社員がいました。彼らの一部は給与も出ないまま、「しんがり」を買って出て、無一文に近い状態になっています。この中心にいたのは、会社幹部に裏切られながら業務の監査をしていた人間たちで、証券会社では「カネを稼がない、場末の連中」と陰口を叩かれていた人々でした。・・・
山一證券の破綻を、記者会見で号泣した社長の姿とともに記憶している方も多いことでしょう。「社員は悪くありませんから!」という絶叫でした。
社長までが泣く、その大混乱にあって、「しんがり」の彼らはなぜ筋を通そうとしたのでしょうか。逆襲なのでしょうか、意地でしょうか、優しさなのでしょうか。
山一が消えたあとも、彼らは不器用な人生を送っています。しかし、決して不幸ではないと言います。「会社の破綻なんて人生の通過点に過ぎないよ」「潰れたって、何とかなるんだ」と。
一生懸命生きていれば、きっと誰かが見ていてくれる。――そんな彼らのメッセージは、どんな会社が潰れても不思議のない、リスク多き時代を生きる人々の励ましとなるのではないでしょうか。

 号泣をしたあの社長は就任したばかりだったのも初めて知りましたし、半ば押し付けられた社長であったのも初めて知りました。
 そうした中、原因究明と精算を半ば押し付けられて担った人々を中心に、本書は語られます。

<主流にいないと疲れる>

 本書の中心になるのは、本書では「場末」と呼ばれる業務監理本部という部署の人々。
 収益には結び付かない部門は、どんな組織でも軽視されやすいと思います。
 業績が見えにくい部門は、どんな組織でも軽視されやすいと思います。

 業績が見えにくいのではなくて、業績を見る能力がない人々が経営しているだけかもしれませんが。

 そういう非主流部門に所属すること自体、ある意味疲れます。

 先日、宿直勤務がありました。
 宿直だから寝ていいのでしょうが、なかなかそうもいかず、徹夜することもしばしばです。
 徹夜明けだから寝たいと思っても、世間はどこも騒がしい。
 非主流であるのは疲れます。

 そんな中、誇りをもって仕事ができる環境だったのは素晴らしいことだと思いました。

<組織が健全であることの価値>

 コンプライアンス(法令遵守)が叫ばれて久しいですが、残念ながら雇用者の都合のいい使われ方しかされていない事が多いように思います。
 お金は生まないけど正しいことは、軽視されがちです。
 組織防衛のために、不正をうやむやにしてしまうのは、ありがちです。

 実感を込めて言いたいです。

 本書で繰り返し語られるのが、それが組織の存続と誇りのため必要なのだということです。
 「組織が健全であることが市場で生き残る道であり、社員に向上心を抱かせる」というのは、その通りだなと思いました。

<敏感な人>

 真面目とか不真面目とかではなくて、不正に敏感な人と鈍感な人がいるのかもしれません。
 それは、もって生まれた気質の要因もあるでしょうし、組織的環境的な要因もあるでしょう。

 この本を読んだ頃に知人から紹介された記事に、以下のようなものがありました。

「HSP」とは、ハイリー・センシティブ・パーソン(Highly sensitive person) の略で、さまざまな刺激に過剰に反応してしまう「高度な感覚処理感受性」と呼ばれる気質および、そうした気質を先天的に有する人を言う言葉です。アメリカ の心理学者のエレイン・N・アーロン博士が考案し、1996年に自著で発表しました。「HSP」には、他者に比べて、職場 や家庭での日常生活に疲れやすさや生きづらさを感じる人が多く、周囲から「繊細で神経質」「内気」などと見られがちです。アーロン氏によると、「HSP」は 病気や障害ではなく、あくまで気質の一 種。五人に一人程度は見られる正常なものだといいます。

五人に一人が該当、“敏感過ぎる”という気質 周囲の誰かが怒られているだけで お腹が痛い!?

「光や音、匂いなどの刺激が気になってしかたない」 「感情やイメージをたくさん感じているのに、うまく言い表すことができない」 「相手のことを考えすぎて、イヤだと言えず断れない」 「他人から監視されたり、評価されたり、競争させられるのが大嫌い」 「周囲の人の気分や感情に左右されて動揺しやすい」 「複数のことを短時間でこなすよう求め られると混乱してしまう」
これらは、「HSP」の人に共通する特徴の一部です。「HSP」とは、感受性が鋭敏であるがゆえに、他の人にとっては何でもないような小さな刺激にも驚いたり、動揺したりしやすい気質のこと。上述のアーロン博士らの研究が進む前は、 たんなるシャイな性格や繊細さ、内向性、あるいは社会恐怖症、社交不安障害などの精神障害の一種とも混同されが ちでしたが、近年、それらとは一線を画す特質であることが分かってきました。
「HSP」の人は、日常生活では、他人の何げない一言がいちいち心に引っかかったり、周囲の雰囲気に過剰に反応したりして、必要以上に疲弊し、傷ついてしまうことが少なくありません。極端な場合、自分でなく、周囲の他の誰かが上司や教師などから叱責されているときでもいたたまれなくなり、お腹が痛くなって しまうことがあるそうです。
社会人になって組織に入り、会社などの管理の下で働き始めると、生きづらさを感じるケースがさらに増えてきます。複数の仕事を短時間のうちに達成することを要求されると途端に混乱してミスしてしまったり、頼まれたことは断ってはいけないという思い込みが人一倍強いた め、過剰負担を抱え込んでしまったり。 一番問題なのは、「生きづらいのは、自分が弱い人間だから」と、自分を責めてしまう傾向があることです。放置していると、睡眠障害やパニック症状を起こし、さらにはうつ病などにかかってしまう可能性もあります。
数年前には「鈍感力」が注目され、最近は職場でもメンタルタフネスやレジリエンスといったストレス耐性を求める風潮がますます強まっています。悩みやすい 「HSP」が、こうした“逆風”下で強く生き抜くためには、まず「HSP」であることを自覚し、その特性を理解しなければなりません。病気や障害ではなく、 「HSP」という気質だと分かるだけで、 「弱い自分が悪い」と決めつけて責めていた自罰傾向から解放され、心が軽くなるといいます。
「HSP」は、言い替えれば、周囲からの 刺激を感覚データとしてより細かく、より深くとらえられる性向の持ち主。それゆえに、周囲から「一つのことを多角的に見られる人」「人に共感しやすく気配り上手」などと評価されていることも多 いのです。「HSP」のポジティブな面を長所と認め、職場などで積極的に活かしていくことが大切でしょう。
(「HSP」~五人に一人が該当、“敏感過ぎる”という気質 周囲の誰かが怒られているだけでお腹が痛い!?・2017年6月7日付)

 こういった刺激に敏感な人も含有できる組織は健全なのでしょう。
 不正に敏感な人も、同じです。

<不正を行いかねない僕たち>

 ハンナ・アーレント(Hannah Arendt,1906.10.14-1975.12.4)は、「悪は悪人が作り出すのではなく、思考停止の凡人が作る(参照)」と言いました。
 ミルグラム(Stanley Milgram,1933.8.15-1984.12.20)の実験(Milgram experiment・参照)が示すように、「普通の平凡な市民」であっても、権威ありそうな人に必要であると指示されてしまうと「冷酷で非人道的」な行為をしてしまいます。

 とは言え、そこには葛藤の有無などの差違はあります
 アイヒマン(Adolf Otto Eichmann,1906.3.19-1962.6.1)の経歴を見ると、むしろ平凡な人物でも、少しずつハードルをあげていくことで徐々に冷酷なことや非人道的な事が当たり前になっていく恐ろしさも感じます(参照参照)。
 詐欺などで徐々に要求を上げていくフットインザドア(foot in the door)やドアインザフェイス(door in the face)的な感じでしょうか。

 組織の一員である僕たちは、言い訳さえあれば不正に手を染めかねない危険性があります。
 本書でも、顧客のためとか業績のためとか大蔵省証券局の指示とか上司の復権とか上司の指示とか色々な言い訳で不正がなされていました。
 組織の中にあっても、僕らは思考停止に陥ってはならないということでしょう。

<ご当地本としての楽しみ方>

 個人的に面白かったのが、僕にとって縁のある福岡県と鹿児島県が結構出てきたこと。

 まず、簿外債務を膨らませた当時の社長であった行平次雄氏と、廃業直前まで社長であった三木淳夫氏とが、共に福岡県出身で県人会的な繋がりがあったということ。

 次に、廃業当時の業務監理本部長で常務であり、この本の主人公格の嘉本隆正氏が後に前田証券(現ふくおか証券)に就職していること。
 それだけではありません。

 嘉本氏は後に、先輩である元副社長の評伝を書きます。
 取材するうちに、元副社長が損失補填を告発しようとして左遷された事が明らかになります。
 その元副社長は、青柳與曾基氏。
 青柳氏は福岡県出身だそうで、評伝を書くために嘉本氏は福岡に通ったのだそうです。

 また、営業考査部長で精算の責任者だった菊野晋次氏は、鹿児島県加世田市の出身。
 鹿児島大学文理学部卒だそうで、微妙に僕の先輩に当たるようです。

 「債務隠蔽の知恵袋」と称された常勤監査役の木下公明氏は、鹿児島県の川内高校出身。

 不正をするのも告発するのも、福岡県人鹿児島県人が目白押しです。
 他人には全く面白くないでしょうが、個人的には面白かったです。

<従業員は責任を問われたのか>

 この事件では、山一證券の幹部たちが刑事と民事の両面で責任を問われています。
 前述の三木氏は損害賠償等で財産を失ったとのことでした。

 ただそれは、経営陣に限ったことでした。
 上司から指示されて仕組みを考えた人や、運用してた人は責任を問われていないようです。

 そこで、後学のために法的にどうなっているのか調べてみました。

 今回は過失ではありませんが、過失の場合、些細なものに対しては損害賠償請求できないようです。
 また、過失から通常発生するといえる損害のみが請求可能だそうです。
 そして、損害を全額請求するのは法的に問題があるそうです。

 儲けをすべて従業員が受けとるわけでもないのに、損害だけ全額負担するのは理不尽であるということのようです。

 そして、給料から天引きするのは違法で、賠償を被雇用者の同意がなく徴収するのも問題があるそうです。

 また、労働者の損害賠償責任について違約金を予め定めていたり、損害賠償の予約をしていたりするのは、労働基準法第16条の違反だそうです(参照参照参照)。

<著者の清武氏について>

 著者の清武英利氏は、「清武の乱」で知られる方だそうです(参照参照参照)

 「清武の乱」とは、当時株式会社読売巨人軍専務取締役球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行だった清武氏が、独断で記者会見した事件らしいです。
 記者会見の内容は、同社取締役会長だった渡邉恒雄氏がコーチ人事を独断でやってるというもの(参照)。
 当時は読売新聞で大々的に清武氏を叩いていたものでした。

 清武氏は渡邉氏の行動を「コンプライアンス上問題がある」としていました。
 同社オーナー兼代表取締役社長である桃井恒和氏は、「会見を球団の誰も知らなかった。代表取締役である自分の知らないところで、ああいう形でやったのでは逆にコンプライアンスという意味でとんでもない」、「渡邉氏は親会社(読売新聞)のトップで、球団の平取締役とは違う、不当な鶴の声ではない」とコメントしたようです(参照)。
 そういう事情もあって、「コンプライアンス」には殊更敏感なのでしょうか

 ちなみにこの山一證券の報告書は、国広総合法律事務所で公開されています(参照)。
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