「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下児童ポルノ法)」を改訂しようという動きがあるそうです。
自民、公明両党は10日、個人が趣味で児童ポルノの写真や映像を持つ「単純所持」も規制対象に加える「児童買春・ポルノ禁止法改正案」を衆院に提出した。法案審議は夏以降の臨時国会になる見通し。 改正案は「何人もみだりに児童ポルノを所持、保管してはならない」と規定。性的好奇心を満たす目的で所持した場合は1年以下の懲役か100万円以下の罰金を科す。インターネットのプロバイダー(接続業者)に児童ポルノの拡散防止と捜査機関への協力を求める努力義務も盛り込んだ。 法施行後の1年間は経過措置期間とし、罰則規定は適用しない。捜査機関が「単純所持」規定を乱用しないよう注意規定を設けた。児童ポルノを扱った漫画やアニメなどの規制は、対象の定義が難しいことや「表現の自由」に触れる恐れがあるため、今回の法改正では見送った。 (児童ポルノ「単純所持」も改正案で禁止へ・2008年6月10日付サンケイスポーツ)
この法律は、「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする」ものです。 (続きは、性的な用語が含まれるため勝手ながら成人のみの閲覧を推奨いたします) 当サイトでのこれまでの扱い
この法律について最初に取り上げたのは1999年5月9日。 正確には、当時の掲示板で2月4日に書き込みされた記事に6日に答えたのが最初です。
当時の僕の意見としては、児童買春(いわゆる援助交際)も児童ポルノも安易な規制は地下化されるだけだが、さりとて規制は必要だろう。という曖昧な結論だったようです。 ただ、児童ポルノの定義の1つに「衣服の全部又は一部を脱いだ児童の姿態であって性的好奇心をそそるものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」とあるのが極めて曖昧であることと、絵画の規制は守るべきものがなんなのか分からないということと、単純所持規制への懸念と子どもの人権を守りえるかという実効性の問題について書いていたようです。 つまりは読み返したけどよく分からないのですが、多分は当時の僕もよく分からなかったようです。
2004年に改訂されたときにも7月14日、8月24日、10月3日と取り上げていますが、やはりこの時もよく分かっていなかったようです。
今回は、とりあえず数ヶ月間研究しましたので、少しは分かっているかなと思い書いてみました。
定義
ちなみに、この法律における「児童」とは、「十八歳に満たない者」のことを指すようです。 「児童ポルノ」とは、「写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物」で、以下の内容のものであるらしいです。
- 「児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態」を「視覚により認識することができる方法により描写したもの」
- 「他人が児童の性器等(注・性器、肛門又は乳首)を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」を「視覚により認識することができる方法により描写したもの」
- 「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」を「視覚により認識することができる方法により描写したもの」
今回は児童買春については改訂しないようですので、そちらについては省きます。
女子高生がTバックを姿で出演するDVDが摘発された事例もありますが、不起訴となったようです(参照)。
単純所持規制の意味
わいせつ物に対しては、刑法第175条で「わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。」となっていて、頒布・、販売・公然と陳列・販売目的所持が禁止されているそうです(参照)。 現行の児童ポルノ法では第7条で児童ポルノの提供と提供目的の製造・所持・運搬・輸入・輸出・保管と製造が禁止されています(参照)。
単純所持規制を導入するのは一般のわいせつ物より厳しいですが、これには様々な理由があるようです。
- 被写体となった児童にとって児童ポルノが存在し続けることが人権侵害である
- 所持を規制すれば児童ポルノへの需要が減り製造や提供をする奴が減る可能性がある
- 児童ポルノに親しんだ人が児童を対象にした性犯罪等に走る可能性がある
- 児童ポルノが増え続けている
- 現行法では限界がある
- 単純規制は世界の潮流(単純所持規制をしていない日本が児童ポルノの発信地になっている)
単純所持規制の弊害
ただ、単純所持規制には弊害もありそうです。
- 電子的に記録された児童ポルノを紛れ込ますのは簡単なので、冤罪を生む可能性がある
- 捜査権の濫用、プライバシーの侵害や、監視国家化を招く
- 所持しているかどうか捜査が難しく、現場の警察官に多大な負担をかける可能性がある
- 所持している人は被写体の年齢を知る術がない
- 以前は普通に売られていたものが違法となるので、犯罪者を量産する可能性がある
- 国立国会図書館でも廃棄しなければならない可能性がある(そもそもポルノは国立国会図書館に納本されていない可能性がある)
- ポルノと性犯罪の因果関係に付いては分からない部分が多い(規制が犯罪を生む可能性は否定できない)
- 製造者や販売者がさらに地下にもぐってしまい、摘発が困難になる
- 現在でも日本から発信される児童ポルノは少ない
- 単純所持規制は国際的にもやらなければいけないわけではない
「わいせつ」というのはきわめてあいまいですから、単純所持まで規制するのは慎重であるべきだと思います。 そもそも、性癖を取り締まるというのは難しいことですし、きりがありません。あまり良くないことなのではないかとも思います。 ただ、被害を受けた児童(18歳未満の人)のことを考えると難しいですね。
論議しにくい児童ポルノ問題
この件で何よりも問題は、「児童ポルノ」となると論議しにくいことです。 1989年に東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件が起こって以降、「ロリコン」と目されることは社会的な死を意味します(大げさ?)。
この事件の死刑囚については、「ロリコン」ではなかったとの分析もあります(参照)し、冤罪であると主張する人もいるようですが、関係ないので深く追求しません。
ここで規制への慎重論を唱えれば、「ロリコン」扱いされるのは必至でしょう。 しかし、個人的にネットを使っている若い男性ならば、18歳未満のHな画像を単純所持している人はかなり多いと思います。てか、どの画像が18歳未満なのか分からないし。 そういう意味では、多くの人に関係がある問題であると思います。
ネットでの議論を見ていると、どうも規制派は反対派を「ロリコン」扱いし、反対派は規制派を「カルト」呼ばわりして水掛け論になっているケースが散見します。 どうすれば実質的に子どもを守れるのか。冷静な議論が今求められていると思います。
【2009年8月28日追記】
2日連続でこの記事に拍手がつきました。
先の国会でこの改正案が審議され、下手すれば篠山紀信氏撮影のSanta Feを所持しても逮捕されるとのことで大いに話題になったようです(参照・参照)。 その後国会は終わったので、どうも廃案になったようですが。
それと、弊害の一つとして「国立国会図書館でも廃棄しなければならない可能性がある(そもそもポルノは国立国会図書館に納本されていない可能性がある)」と書いていましたが、そういうことはなさそうです。 法案には、「自己の性的好奇心を満たす目的で」とあるからです(参照)。 ただ、これだと図書館や研究機関はいいでしょうが在野の研究者なんかだと証明が難しいですよね。 そもそも、知的好奇心と性的好奇心の境目ってどこなんでしょう。
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